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広島高等裁判所 平成10年(ネ)328号 判決 1999年8月24日

控訴人

サンデン交通株式会社

右代表者代表取締役

林孝介

右訴訟代理人弁護士

沖田哲義

被控訴人

峯松武人

被控訴人

田中和男

被控訴人

西田義秋

被控訴人

藤田哲雄

被控訴人

稲田二六

被控訴人

小西次夫

被控訴人

久保江功

被控訴人

岡崎功

被控訴人

橋本泰彦

被控訴人

田畑眞琴

被控訴人

大野義人

被控訴人

福吉征紀

被控訴人

古田勝

被控訴人

私鉄中国地方労働組合サンデン交通支部

右代表者

橋本泰彦

右一四名訴訟代理人弁護士

田川章次

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文同旨

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の「第二 当事者の主張」に記載するとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一二頁七行目(本誌七四六号<以下同じ>45頁3段20行目)の「古くなく」を「古くなる」と改める。

二  同一三頁一行目(45頁3段30行目)の後に行を改めて次のとおり加える。

「エ アクセル

新車時は軽いが、時間が経過するにつれて、数か所ある継手にガタが出てきて重くなり、戻りも悪くなる。このため、運転手は、余分な神経を使い、疲労し易くなる。」

三  同一三頁二行目(45頁3段31行目)の項目の「エ」を「オ」と、同七行目(45頁4段9行目)の「オ」を「カ」とそれぞれ改める。

四  同一四頁三行目(45頁4段20行目)の「カ」を「キ」と、同八行目(45頁4段27行目)の「キ」を「ク」とそれぞれ改める。

五  同一五頁六行目(46頁1段12行目)の「ク」を「ケ」と改める。

六  同一六頁末行(46頁2段8行目)の「営業者」を「営業所」と改める。

七  同一九頁六行目(46頁3段26行目)の「人格権」の後に「等」を加える。

八  同二一頁四行目(46頁4段29行目)の後に行を改めて次のとおり加える。

「(四) 貸切業務からの排除

被控訴人運転手らは、新車を配車されない結果、貸切業務から一切排除されている。貸切業務は、乗務員にとっていわば憧れの業務であり、これから排除されていること自体により、精神的に多大の苦痛を被っている。

また、控訴人では、年功により本人給と賞与が決定されており、この面では給与に違いはないが、新車の配車を受け、貸切業務が多くなれば、これに伴う諸手当が増加するのであり、収入面からも侵害を受けている。」

九  同二二頁三行目(45頁1段14行目)の「担当され」を「担当させ」と改める。

一〇  同二九頁末行(48頁2段12行目)の後に行を改めて次のとおり加える。

「 控訴人は、平成一〇年七月二日の新車の配車に際しては、新たに設けられた配車基準(以下「新配車基準」という。)を適用して、勤務年数、出退勤、事故回数、諸規定遵守のほか、社内キャンペーンの協力度、生産性協力度による成績順に割り当てた。その結果、社内キャンペーン協力度、生産性協力度について各運転手の差異が大きいことが判明した。このような傾向は、過去も現在も変わらないのであり、控訴人が生産性協力度をもって新車の配車を行ってきたことの妥当性を裏付けるものである。」

一一  同三〇頁一行目の後(48頁2段13行目)に行を改めて「なお、被控訴人らは貸切業務について主張するが、そもそも、貸切業務用の車両と乗合業務用の車両とは構造が異なっており、混用は困難である。そこで、どの運転手を貸切りに乗せるか、あるいは乗合いに乗せるかは人事権の行使の問題であり、被控訴人らの主張する配車差別とは別の問題である。また、控訴人の給与体系は、本人給と手当の二種類であり、手当の主なものは時間外手当であるが、その計算方法は、全ての運転手に共通であり、これも被控訴人らの主張する配車差別の問題とは関係がないのである。」を、同七行目(48頁2段23行目)の「第三回」の前に「原審」をそれぞれ加える。

第三証拠

本件記録中の原審及び当審証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  当裁判所の認定判断は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の理由欄に認定説示するとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決三二頁八行目(48頁3段29行目)の冒頭から同五六頁九行目の末尾(52頁4段3行目)までに限る。)。

1  原判決三三頁二行目(48頁4段8行目)の「<証拠略>」の後に「<証拠略>」を加える。

2  同三五頁一〇行目(49頁2段8行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」と改める。

3  同三六頁五行目(49頁2段20行目)の「ク」を「ケ」と改める。

4  同三七頁六行目の末尾(49頁3段13行目)に「そして、(人証略)は、その証人尋問で、控訴人では、運行にかかるバスを日々運行前にその運転手が運行前点検票に従って点検しており、不具合があれば随時点検整備を行い、また、一か月、三か月毎の定期点検を行い、一年毎に車検整備を行っており、部品等が経年変化により摩滅等すればこれを交換しているので、新車と旧車との間に特段の性能上の違いはない旨供述し、「新・旧車両に関する原告の主張に対する反論」と題する書面(<証拠略>)にその旨記載している。」を、同八行目(49頁3段22行目)の「明らかである」の後に「(旧車において、客席のシートが変色し、塗装が古ぼけ、冷房の温度調節に不具合があることは、弁論の全趣旨により明らかである(<人証略>の右供述も、これらを否定する趣旨のものではないと認める。)。)」をそれぞれ加える。

5  同三八頁四行目(49頁3段30行目)の「事実」から同五行目(49頁4段1行目)の「明言」までを「そして、控訴人が、生産性の高い運転手に対する論功行賞として新車を配置する旨主張」と改め、同六行目の末尾(49頁4段4行目)に「したがって、(人証略)の右供述及び右書面の記載は直ちには採用できず、控訴人の右反論も採用できない。」を、同八行目(49頁4段6行目)の「<証拠略>」の後に「<証拠略>」をそれぞれ加える。

6  同四〇頁八行目(50頁1段20行目)の「例は」の後に「ほとんど」を加える。

7  同四一頁三行目(50頁2段2行目)の「証言」を「供述」と、同四行目(50頁2段2行目)の「けれども」から同行目(50頁2段4行目)の「であり」までを「が、右供述は、第二次審査を具体的にどのような資料に基づいて、どのように行っているのかといった点については甚だあいまいなものであり、右供述をもってしても」と、同六行目(50頁2段8行目)の「とは到底思われず、」を「とまでは認めるに足りない。また、控訴人の各営業所長経験者の陳述書(<証拠略>)の記載しているところによっても、各営業所長において、右のような第一次審査を行った後、総労働時間、時間外労働時間の量を考慮するなどといった明確な基準に基づいて新車担当の候補者を決めているものとは認めるに足りない。さらに、当審(人証略)は、その証人尋問で、平成六年当時の小月営業所では、明確な新車の配車基準はなく、配車されるバスが大型車か中型車(補助金対象車両)か、会社への協力度などを考慮しており、右時点では、控訴人がバスカードを導入した直後でこれによる営業収入の向上を図っていたことから、バスカードの売上高を最重要視したなどと供述し、陳述書(<証拠略>)にその旨記載しているが、右供述等によれば、新車の配車には会社への協力度が重視されているといっても、その協力度の内容は、甚だ曖昧かつ客観性に欠ける場当たり的なものというべきであり、これらの証拠を総合しても、結局のところ、右認定の第一次審査に相当する審査基準のほかに、控訴人の社内において何らかの明確な基準となるものがあったとか、また、そのような基準により現実に配車がされてきたとは認めるに足りない。」とそれぞれ改める。

8  同四二頁八行目(50頁2段30行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」と改め、同行目(50頁2段30行目)から同九行目(50頁2段30行目)にかけての「<証拠略>」を削り、同九行目(50頁2段30行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」と、同一〇行目(50頁2段30行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」と、同行目(50頁2段30行目)から同末行(50頁2段30行目)にかけて「<証拠略>」とあるのを「<証拠略>」とそれぞれ改める。

9  同四三頁一行目(50頁2段30行目)の「<証拠略>」の後に「<証拠略>」を加える。

10  同四六頁二行目(51頁1段2行目)の「しかし、」の後に「控訴人の新車の配車基準として各運転手の勤続年数、免許取得年限、運転経験年数、出退勤状況、事故歴等の要素のほかに、総労働時間、時間外労働といった控訴人への協力度や生産性といわれるものが考慮されてきたとは認めるに足りないことは前示のとおりであるが、右総労働時間、時間外労働と配車との関連性についてみるに、」を加え、同行目(51頁1段2行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」と改め、同三行目(51頁1段2行目)の「<証拠略>」の後に「、<証拠・人証略>」を、同行目(51頁1段3行目)の「乗合部門」の前に「ただし、控訴人のバスの営業には、乗合部門と貸切部門とがあるが、被控訴人運転手らはいずれも乗合部門を担当しているので、以下、」を、同行目の末尾(51頁1段4行目)に、「、以下のとおり認められる。」をそれぞれ加え、同五行目(51頁1段8行目)の「平成四年度」から同六行目(51頁1段9行目)の「みた」までを削り、同六行目(51頁1段9行目)の「右中原、」の後に「中村、」を加え、同行目(51頁1段10行目)の「同年度」を「平成四年度」と改め、同行目(51頁1段10行目)の「労働時間数」の後に「(これは、公祝勤日数に対応する時間外勤務時間数と特別休暇に勤務した日数に対応する時間外勤務時間数との合計値である。以下同じ。)」を加え、同七行目(51頁1段11行目)の「であり、」を「、五〇八時間であり、これを」と、同九行目の冒頭(51頁1段14行目の「のそれを」)から同行目(51頁1段16行目)の「であり」までを「のそれと対比すると、右中原は右被控訴人らのそれを上回っているが、右中村及び伊藤は」とそれぞれ改める。

11  同四七頁一行目(51頁1段20行目)の「平成五年度」から同行目(51頁1段21行目)の「みた」までを削り、同行目(51頁2段21行目)の「同年度」を「平成五年度」と改める。

12  同四八頁四行目(51頁2段15行目)の「真人」を「眞人」と改め、同八行目の後(51頁2段23行目)に行を改めて次のとおり加える。

「(4) 控訴人は、平成五年度中に、新下関営業所勤務でサン労組合所属の梶山瞭、井田正和、末永保成に対して新車を配車したが、右の者らの平成四年度の年間超過労働時間数は、順に八〇七時間、七六四時間、六六七時間であり、同営業所に勤務する被控訴人峯松武人(五九六時間)、同西田義秋(四二一時間)、同藤田哲雄(一四八時間)、同橋本泰彦(四七二時間)、同古田勝(同(ママ)三七七時間)のそれを上回っている。なお、平成六年は、新下関営業所への新車の配車はない。」

13  同四八頁一〇行目(51頁2段27行目)の「及び」から同末行(51頁2段27行目)の「よれば」までを「を総合してみても、前示のとおり」と改める。

14  同四九頁一行目(51頁2段30行目)の「できず」から同三行目の末尾(51頁3段4行目の「それを」)までを「できない。なお、当審(人証略)は、その証人尋問で、小月営業所で平成六年に中山二千六百に新車を配車した根拠について、配車の対象とされたバスが中型車(補助金対象車両)であることから、ベテラン運転手には配車しないこととし、会社への協力度を考慮し、バスカードの売上高が多かった右中山に配車することにしたと供述し、陳述書(<証拠略>)にその旨記載しているが、その協力度の内容は、甚だ曖昧かつ客観性に欠ける場当たり的なものであり、そのような審査基準があったものとは認めるに足りないことは前示のとおりであり、また、被控訴人稲田二六の陳述書(<証拠略>)の記載内容と対比しても、中型車(補助金対象車両)をベテラン運転手には配車しないとの配慮についても何らかの合理性があったものとも認めるに足りず、結局のところ、同証人の右供述等は採用できない。そして、控訴人においては、各運転手の勤続年数、免許取得年限、運転経験年数、出退勤状況、事故歴等の要素をもって新車の配車基準としていたものと認められることは前示のとおりであるところ、これらの要素についてみれば、」と改める。

15  同五〇頁一行目(51頁3段21行目)の「の時間外労働」から同三行目の末尾(51頁2段24行目)までを「に対し、新車を配車しなかったことにつき、合理的な理由があったものとは認めるに足りない。」と改め、同三行目の後(51頁2段24行目)に行を改めて次のとおり加える。

「 ところで、控訴人は、平成一〇年七月二日の新車の配車に際して新配車基準を設け、これを適用したところ、社内キャンペーン協力度、生産性協力度について各運転手の差異が大きいことが判明したものであり、生産性協力度をもって新車の配車を行ってきたことの妥当性を裏付けるものである旨主張する。そして、バス運転手配車基準(<証拠略>)によれば、右のような新基準が設けられたことは認められるが、そもそも、右新基準にあるような社内キャンペーン協力度、生産性協力度といった明確な基準をもって、控訴人が、本訴の対象である昭和五七年初めから平成六年五月二〇日までの間の新車の配車を行ってきたと認められないことは前示のとおりである。したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の右主張は採用できない。」

16  同五二頁四行目の後(52頁1段8行目)に行を改めて次のとおり加える。

「 次に、被控訴人らは、被控訴人運転手らは新車を配車されない結果、貸切業務から排除されており、また、そのためにこれに伴う諸手当が得られないと主張する。被控訴人ら運転手がいずれも乗合業務に従事していることは前示のとおりであるが、被控訴人らに新車が配車されないことと貸切業務に従事していないこととの間に関連性があると認めるに足りる証拠はない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人らの右主張は採用できない。」

17  同五二頁一〇行目(52頁1段18行目)の「第三回」の前に「原審」を加える。

18  同五三頁三行目(52頁1段25行目)の「しかし、」の後に「被控訴人らの主張する事実をもってしても、」を加える。

19  同五四頁三行目(52頁2段12行目)の「その」から同六行目(52頁2段19行目)の「ない。)」までを「、当時の一般的労使関係にかんがみても、実に明白、重大なものである上」と改める。

20  同五五頁五行目(52頁3段7行目)の「各自」を「各」と、同一〇行目(52頁3段17行目)の「各自」を「それぞれ」とそれぞれ改める。

21  同五六頁五行目(52頁3段27行目)及び同八行目(52頁4段1行目)から同九行目(52頁4段2行目)にかけて各「各自」とあるのをそれぞれ「それぞれ」と改める。

二  以上の次第で、被控訴人らの本訴請求は、控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償として被控訴人運転手らにつき各九〇万円及び被控訴人組合につき六〇万円並びに右各金員に対する不法行為日の後である平成六年五月二八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないからこれらを棄却すべきであるところ、これと同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項本文、六一条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川波利明 裁判官 布村重成 裁判官 金子順一)

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